業務用エアコンや空調設備を導入する際に活用できる補助金制度まとめ
業務用エアコンや空調設備を導入するにあたって、多くの事業者の方が気になるのは、なんといっても導入時の費用負担ではないでしょうか。オフィスや店舗、工場などで使用される業務用の空調設備は、規模が大きい分だけ導入コストも高額になりがちです。しかし、近年では地球温暖化をはじめとする環境問題への対策が叫ばれており、国や自治体が提供している補助金や助成金制度を活用することで、初期費用を抑えつつ省エネ性能の高い設備を導入できる可能性があります。
本記事では、2025年に業務用エアコンや空調設備を導入する際に利用が検討できる補助金制度をまとめました。すでに募集が締め切られているものの再度設置される可能性のある制度も含め、全国規模の補助金制度から地域限定のものまで幅広く紹介します。また、補助金を利用する際の注意点や申請手続きにおけるポイントなども詳しく解説していますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
1. 全国で使える業務用エアコンの補助金
まずは、日本全国の事業者が比較的広く活用できる補助金制度について紹介します。国が主導する取り組みが多いため、予算規模も大きく、複数の応募枠や公募期間が設けられているケースが一般的です。毎年度の補正予算や政策方針によって細かな条件が変わる可能性が高いので、常に最新の情報を確認しましょう。
■ 省エネ補助金
制度の目的
省エネ補助金は、高効率な空調設備や照明器具、生産設備への切り替えを支援することで省エネルギーの推進を図る制度です。企業が設備更新にかかる費用負担を軽減しながら、持続可能なエネルギー活用を促すことで、温室効果ガスの削減やエネルギーコスト削減にもつなげる狙いがあります。
制度の概要
- 対象地域:全国
- 公募期間:1次公募が2025年3月末頃、2次公募が2025年5月末頃に実施予定
- 補助対象者:国内で事業を営む法人および個人事業主
- 対象設備(Ⅲ)設備単位型:高効率空調、変圧器、LED照明器具(制御機能付き)、業務用給湯器、産業用モータなど
- 補助金額(目安):上限1億円、補助率1/3以内
- 予算:令和6年度(2024年度)補正予算(令和7年=2025年に申請可能)
- 管轄省庁:経済産業省
- 執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)
- 公募要領:省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)
この制度は毎年行われている傾向がある一方、補助対象となる設備の要件や補助率、対象事業者の範囲などが年度によって変更される可能性があります。申請を検討している場合は、必ず公募開始前後に公表される最新の公募要領をチェックして、必要書類や提出方法などを確認しておくことが大切です。
2. 地域別で使える業務用エアコンの補助金例
全国規模の補助金制度以外にも、地域限定の補助金制度が充実している場合があります。自治体によっては独自の産業振興や働き方改革、地域雇用の創出、観光資源の活用など、多種多様な目的で補助金制度を整備していることがありますので、こまめに各自治体の公式ホームページを確認し、最新情報を得ることが重要です。以下では、具体的な地域ごとの補助金例をいくつか紹介します。
■ 【東京都】ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業
制度の目的
東京都が掲げる「ゼロエミッション東京」実現に向け、中小企業をはじめとする事業者が省エネ性の高い空調設備や換気設備を導入・更新する際の費用を支援する制度です。単なる設備導入だけでなく、運用面の改善も併せて支援対象に含まれる点が特徴で、CO2排出量の削減や企業の省エネ意識の醸成にも大きく貢献します。
制度の概要
- 対象地域:東京都
- 公募期間:第4回 2024年11月1日~2024年11月15日、第5回 2025年1月20日~2025年1月31日
- 補助対象者:中小企業、学校法人、公益財団法人、医療法人、社会福祉法人など(リース事業者やESCO事業者との共同事業も対象)
- 対象設備:空調設備、換気設備
- 補助金額(目安):1000万~5000万円未満
- 公募要領:ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業
■ 【東京都】東京都既存非住宅省エネ改修促進事業補助金
制度の目的
東京都が2030年までに温室効果ガス排出量を半減する目標を掲げる中で、既存の非住宅建物を省エネルギー化するための改修工事費を補助する制度です。断熱性能の向上や、空調・換気設備の効率化など、建物の省エネ性能を多角的にアップさせるための工事費用が補助対象となります。
制度の概要
- 対象地域:東京都
- 公募期間:2024年4月1日~2025年3月31日
- 補助対象者:中小企業、小規模事業者、NPO法人、一般社団法人、個人事業主、医療法人、学校法人など
- 対象設備:空調設備、換気設備、エコキュート
- 補助金額(目安):その他
- 公募要領:東京都既存非住宅省エネ改修促進事業補助金
■ 【北海道(札幌市)】ゼロエネルギー・ビル(ZEB)・ゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)設計支援補助金
制度の目的
寒冷地として冷暖房需要の大きい北海道札幌市で、ゼロエネルギー・ビル(ZEB)やゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)の設計段階から補助を行う制度です。将来的に省エネ機器・高性能断熱材などを導入しやすくすることで、建物全体のエネルギー効率向上を強く後押ししています。
制度の概要
- 対象地域:北海道札幌市
- 公募期間:2025年1月31日まで
- 補助対象者:中小企業、小規模事業者、NPO法人、大企業、個人事業主など
- 対象設備:空調設備
- 補助金額(目安):100万~500万円未満
- 公募要領:ゼロエネルギー・ビル(ZEB)・ゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)設計支援補助金
3. すでに募集が締め切られている補助金制度
ここからは、すでに募集が終了しているものの、類似の制度が今後再び実施される可能性のある補助金をまとめます。こうした補助金制度は毎年もしくは不定期で公募が再開されることがあるため、「今は募集が終わっているけれど、次年度に復活するかもしれない」という意識をもって情報を追いかけるのがおすすめです。
■ 省エネルギー投資促進支援事業
制度の目的
工場や事業所における高効率設備への更新を支援し、2030年度のエネルギー需給目標の達成を目指す制度です。補助対象となる設備は事前に指定されており、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)が定めるエネルギー消費効率の基準を満たしている必要があります。
制度の概要
- 対象地域:全国
- 公募期間:【2次公募】2024年5月27日~2024年7月1日(既に終了)
- 補助対象者:国内で事業を営む法人、個人事業主
- 対象設備(Ⅲ)設備単位型:高効率空調、産業ヒートポンプ、業務用給湯器など
- 補助金額(目安):補助上限1億円、補助率1/3以内
- 管轄省庁:経済産業省
- 執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)
- 公募要領:省エネルギー投資促進支援事業費補助金
4. すでに募集が締め切られている地域別で使える補助金制度
既に応募終了となっている地域限定の補助金制度にも、再度募集が行われる可能性があります。地域によっては毎年度同様の制度が実施されることもあるため、今後の動向に注目し、必要に応じて積極的に情報収集を行うのがおすすめです。
5. 補助金を利用する際の注意点
業務用エアコンや空調設備の導入に際して、補助金を活用することは大きなメリットがあります。しかし、制度をうまく使いこなすためには、以下のような注意点をしっかりと把握しておく必要があります。
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全額補助にはならない
補助金制度の多くは、対象となる費用の一部のみを補助します。たとえば総事業費の1/2や1/3など、あくまでも一部が対象となるため、残りは自己負担が基本です。そのため、補助金をアテにして全体予算を組むと、実際の費用負担が想定より大きくなるリスクがあります。事前に自己資金や融資計画も含めて検討を行いましょう。 -
補助金の入金時期は導入後になる場合が多い
補助金は後払い方式が主流です。つまり、先に設備投資を行い、その後に実施報告書や領収書などを提出して審査を通過することで、補助金が振り込まれる流れとなります。導入資金を一時的に立て替える必要があるため、キャッシュフローに支障が出ないようにスケジュールを組むことが重要です。 -
公募期間内でも早期終了の可能性あり
補助金は予算額が決まっているため、募集枠が埋まってしまえば公募期間内であっても早期終了になることがあります。とくに人気の高い制度や高額の補助が期待できる制度は早期打ち切りになる可能性が高いので、導入を決めたらできるだけ早めに準備に取り掛かることが得策です。 -
専門家への相談を検討する
補助金の申請には、細かい書類準備や手続きが必要となることが多いです。税理士や社労士、中小企業診断士、あるいは補助金申請に長けたコンサルタントなど、専門家からアドバイスを得ることでスムーズな申請が期待できます。また、施工会社や設備メーカーが申請サポートを行うケースもあるため、事前に確認しておきましょう。 -
同じ補助金の再利用や制度目的との不一致に注意
同一の補助金制度を過去に利用した場合、再度の利用が認められないことがあります。また、補助金の趣旨に合わない用途での設備導入と判断されれば申請は通りません。制度が求める省エネ効果や導入目的と、自社が検討している設備の方向性が一致しているかをよく確認しましょう。 -
設備選定と導入時期の計画性
補助金を利用するためには、公募期間内に工事の着手や発注を行い、指定の締切までに実績報告を行う必要がある場合があります。設備の納期や設置工事にかかる時間を考慮して、無理のない導入スケジュールを立てることが大切です。また、補助金の審査に通過した後でなければ工事を開始できない場合など、制度ごとに厳密な条件が設けられていることもありますので、注意が必要です。
6. まとめ
業務用エアコンや空調設備は、オフィスや店舗、工場などで不可欠なインフラであると同時に、環境対策やコスト削減とも密接に関わっています。近年、国や自治体ではこうした設備の省エネ性能向上をサポートするため、さまざまな補助金制度を設けており、賢く活用すれば導入費用の大幅な軽減が期待できるでしょう。
一方で、補助金申請には期限や書類の準備、導入予定設備の規格・性能の要件など、注意すべき点が多く存在します。また、毎年度内容が変わる可能性も高いため、最新情報の収集が必要不可欠です。気になる補助金制度を見つけたら、まずは公募要領をチェックし、具体的な要件や手続きの流れ、必要書類について詳しく把握するようにしましょう。
さらに、応募が集中する補助金制度の場合、予定より早く募集が締め切られることも珍しくありません。少しでも導入を考えているのであれば、余裕をもって補助金申請のスケジュールを組むことをおすすめします。専門家や、すでに補助金を活用して業務用エアコンの導入を実施した経験のある事業者に相談してみるのも有用です。
業務用エアコンや空調設備の省エネ化は、企業の経営にも好影響を及ぼします。エネルギーコストの削減はもちろん、温室効果ガス排出の削減による社会的評価の向上、従業員が快適に働ける職場環境の整備など、多方面にわたるメリットがあります。補助金制度をうまく組み合わせることで、初期投資の負担を抑えつつ、最新鋭の高効率設備を導入するチャンスです。今後の事業展開や人材確保、顧客満足度向上の観点からも、ぜひ積極的に検討してみてください。